【東京・中野区の不動産鑑定士:全国対応可能】地代・家賃の改定など、賃料の見直しでお困りの方はご相談ください
1.その物件の賃料の額は、相場と比べて高いか、低いか
周辺の似たような物件の賃料相場と比べて、現在の賃料が高い場合には注意が必要です。
それは、現在の入居者が退去した場合、周辺の賃料相場と同じ賃料水準まで賃料が下がってしまう可能性が高いからです。
そのため、今、仮に空室だとしたら、いくらの賃料で貸すことができるのかを、確認(賃料調査)することが非常に重要となります。
ちなみに、理論上は賃料が10%下がった場合、不動産の価格も10%下がります。
不動産の価格(P)= 賃料収入等による純収益(a) ÷ 不動産投資利回り(R)
(例)a=50、R=5.00%(0.05)の場合、Pは、50÷0.05=1,000
a=50×(1-10%)=45、R=5.00%(0.05)の場合、Pは、45÷0.05=900
2.その物件の入居希望者は多いか、少ないか
入居希望者が少ない場合、あるいはほとんどいない場合には注意が必要です。
それは、現在の入居者が退去した場合、新たな入居者を見つけるまでの期間、空室となった部分は賃料の収入がゼロになってしまうからです。
そのため、まず入居希望者の多い地域であるか、次に入居希望者の多い物件であるかを、確認するようにしましょう。
ところで、入居希望者の多い物件とは、一体どういう物件だと思いますか。
それは、競争力のある物件、あるいは長所のある物件です。
具体的には、最寄り駅に近い物件、建築されてから間もない物件、建物のグレードが高い物件、維持管理がきちんとなされている物件などが挙げられます。
3.その物件の借主は1人(1社)か、それとも複数か
その物件の借主が、1人(1社)の場合には、注意が必要です。
区分所有建物(一棟の建物の一部)や物件をまとめて貸している場合がこれに該当するのですが、なぜ要注意なのかお分かりになりますか。
それは、その1人(1社)の借主に依存している状態にあるからです。
つまり、その1人(1社)の借主が退去してしまった場合、その物件の賃料収入がゼロになってしまうからなのです。
特に、区分所有建物の場合には、賃料収入が100か0かという極端な状態になる可能性が高いため、そのリスクを十分に認識しておく必要があります。
4.賃貸経営のために必要な諸経費の額はいくらか
賃料は、①所有者・貸主の手元に残る正味の部分と②賃貸経営するために必要な諸経費、具体的には修繕費、維持管理費、固定資産税、損害保険料といった費用の部分の2つの要素から構成されています。
①の正味の部分を「純賃料」、②の費用の部分を「必要諸経費等」という言い方をするのですが、このような分け方をする理由は何だと思いますか。
それは、所有者・貸主の手元に残る正確な利益部分(純賃料)が分からないと、不動産の正確な価値を把握することができないからです。
例えば、次の2つのケースを比べてみましょう。(前提として、立地、建物ともに同程度で、賃料も適正な水準であると仮定します。)
A.賃料120(年額)
B.賃料100(年額)
仮に、AとBが同じ価格1,400で販売されているとしたら、どちらを購入しますか。
賃料に対する利回り(表面上の賃料収入をベースとした利回りのことを「表面利回り」、「粗利回り」、「グロス利回り」という言い方をします。)は、
A.賃料120 ÷ 価格1,400 ≒ 表面利回り8.6%
B.賃料100 ÷ 価格1,400 ≒ 表面利回り7.1%
となり、Aの方が高利回りに見えます。Aの方を購入すべきなのでしょうか?
それでは、もし次のようにAとBの賃料の内訳が分かっていたら、どちらを購入しますか。
A.賃料120(内訳:純賃料70、必要諸経費等50)
B.賃料100(内訳:純賃料80、必要諸経費等20)
純賃料に対する利回り(「純賃料利回り」、「還元利回り」、「ネット利回り」という言い方をします。)を計算すると、
A.純賃料70 ÷ 価格1,400 ≒ 純賃料利回り5.0%
B.純賃料80 ÷ 価格1,400 ≒ 純賃料利回り5.7%
となり、本当に高利回りなのはBだということが分かります。
このように、表面利回りの水準で不動産の収益性をみることは、その判断を誤ることになるため注意が必要です。(『不動産投資利回り○○%、高利回り物件!』などと記載されている不動産業者の広告宣伝チラシは、ほとんどが表面利回りです。)
不動産投資をする場合には、あなたの手元に残る正味の部分または賃貸経営に要する必要諸経費等を把握することが非常に重要です。
不動産鑑定士 柘植 大徳