【東京・中野区の不動産鑑定士:全国対応可能】地代・家賃の改定など、賃料の見直しでお困りの方はご相談ください
1.中途解約
賃貸借契約について期間内解約の申入れをする際の予告期間を定めます。
違約金支払いの有無(有償・無償)を定めます。
中途解約の取り扱いは、契約期間の定めの有無で内容が異なります。
1)契約期間の定めのない賃貸借契約
借主は、いつでも解約の申入れをすることができます。そして、賃貸借契約は、解約申入れ日から法定期間(建物:3か月、土地:1年)経過後に終了します。(民法第617条)
なお、貸主が解約の申入れをするときは「正当の事由」が要求されます。(借地借家法第28条)
2)契約期間の定めのある賃貸借契約
借主は、中途解約条項(契約期間中であっても解約の申入れをすることができる旨の特約=中途解約権を留保する旨の特約)がなければ、期間内解約の申入れをすることができません。(民法第617条・第618条)
つまり、中途解約条項がない場合には、貸主の合意が得られない限り、借主による一方的な中途解約は認められないため、注意が必要です。
2.違約金
違約金の取り扱いも、契約期間の定めの有無で内容が異なります。
1)契約期間の定めのない賃貸借契約
契約期間の残り(残存期間)が発生しないため、問題にはなりません。
2)契約期間の定めのある賃貸借契約
借主が中途解約した場合に、契約期間の残り(残存期間)の賃料相当額を違約金として支払う旨の特約は、公序良俗違反として無効であるとの裁判例があります。
中途解約があった場合には、貸主は新しい借主との賃貸借契約締結により賃料を得ることができるため、新しい借主を確保するために通常必要とされる期間(6か月~1年程度)に係る賃料の範囲内において、違約金の支払いが認められた裁判例が複数あり、違約金が高額すぎる場合には借主に不利な契約として無効とされています。
そのため、借主の中途解約に対して貸主が請求可能な違約金の金額は、賃料の6か月~1年分程度が目安になりそうです。
3.賃料
対象物件の相場等について賃料調査することは必要ですが、相場と無関係に賃料を定めた場合には、契約締結の経緯に係る諸般の事情・算定方法を明確にしておくことが重要です。
これは、契約開始時以降において経済的な事情変更や契約締結の経緯に係る諸般の事情に変更が生じ、賃料の改定が必要となった場合に備えておくためです。
なお、新たな賃貸借契約を締結する際には、貸主に主導権があるため貸主と借主との間で賃料の額について争いが起こることは通常ありません。貸主が借主候補者の契約申し込みを受諾すれば契約成立となりますが、拒絶しても契約不成立となるに過ぎず、貸主は提示賃料での契約を希望する新たな借主を探せば済むからです。
4.更新料
更新料の支払特約は、高額すぎるなどの特段の事情のない限り有効です。(平成23年7月15日最高裁判例)
そのため、更新料の支払特約を定める場合には、更新料の金額をも考慮して1か月当たりの賃料を判断することが重要です。
例えば、月額賃料:540,000円(税別)、契約期間:3年、更新料:賃料の1か月分という契約内容の場合には、1か月当たり15,000円(540,000円÷36か月、税別)が上乗せされることになるため、実質的な月額賃料は555,000円(税別)ということになります。
5.原状回復
1)原状回復工事の施工会社の確認
貸主から工事会社が指定されている場合には、工事会社を複数とすることで原状回復工事の見積金額の妥当性について比較検討・判断ができるようになります。
貸主の同意が得られる場合には、原状回復工事の施工会社を借主が自由に選択できるようにすること、または協議事項とすることが重要です。
2)内装・設備に係る通常損耗の取り扱いの確認
通常損耗は原状回復義務を負わないのが原則(平成17年12月16日最高裁判例)
原状の定義について貸主に確認し、図面・仕様書等により明確にしておくことが重要です。
3)工事対象の範囲・面積の確認
原状回復工事の施工面積について、実際の工事面積(内法計算)との差異がないか確認することが重要です。
不動産鑑定士 柘植 大徳